事例詳細
Case 92
client :自治体 建設コンサルタント 様
《山間部の非効率な情報管理と防災施設維持の限界》
砂防事業は、土砂災害から人命と財産を守る防災・減災の根幹ですが、その業務は、以下の山間部特有の環境とアナログな情報管理に起因する深刻な課題に直面しています。
1. 現場調査・点検業務の非効率性
○広域分散とアクセス困難な場所での負担
・砂防ダムや渓流保全工、地すべり対策工などの砂防施設は、広範囲かつアクセスが困難な山間部に点在
・パトロールや点検に多くの時間と労力を要する上、現場での手書き記録や地図上での位置特定が煩雑で、業務効率が著しく低下
○二重の記録作業による「残業の温床」とデータ信頼性の低下
・現場で記録した施設の状態、損傷写真、位置情報などを、事務所に戻ってからPCに転記・入力し直す二重作業が発生
・この転記作業が職員の事務負荷を圧迫するだけでなく、入力ミスや情報漏れの原因となり、データの信頼性を低下
2. データ活用と履歴管理の属人化
○施設情報の分散と履歴の活用不足
・砂防施設の設計図、過去の点検記録、修繕履歴などが、紙の台帳や複数のPCファイルに分散して管理されており、特定の施設の情報を瞬時に検索・照会することが困難
・これにより、施設ごとの老朽化の進捗や劣化の傾向を分析できず、計画的な長寿命化や予防保全策の立案が遅れている
○現場情報の属人化と継承の課題
・アクセス困難な現場の地質的特徴、変状発生の経緯といった重要なノウハウが、経験豊富な技術者の記憶に依存しがち
・職員の異動や退職に伴い、これらの貴重な現場ノウハウが失われるリスクが高まっている
3. 災害発生時における初動対応の遅れ
○被害情報の収集と共有の遅延
・豪雨や地震などの災害発生時、広範囲にわたる砂防施設の被害状況や周辺の道路寸断状況といった現場情報が、口頭や電話といったアナログな手段でしか集まらず、対策本部への情報集約にタイムラグが生じる
・迅速な初動調査や、復旧計画の策定に必要な正確な被害位置と状況の特定が遅延する要因となっている
これらの課題が複合的に絡み合い、砂防施設の維持管理コストを増大させるとともに、災害時の防災・減災機能の低下というリスクを孕んでいます。
現場情報投稿システム「REPORT&SHARE」による砂防事業のDX
これらの山間部特有の環境とアナログな情報管理の課題に対し、現場情報投稿システム「REPORT&SHARE」を導入いただきました。本システムは、砂防施設の調査、点検、維持管理の全プロセスをデジタル化し、業務効率と防災・減災機能の向上に貢献します。
1. 現場完結型のデジタル記録とアクセス困難な場所の可視化
正確な位置情報付き記録:
現地踏査や点検の際、職員はスマートフォンから損傷状況、地すべりの変状、渓流の状況などを写真・動画と共にその場で投稿します。
スマートフォンのGPS機能により、アクセス困難な山間部の現場でも高精度な位置情報が自動で付与されます。これにより、事務所での地図上での位置特定や、報告書への二重入力の手間が完全に解消されます。
点検報告の標準化:
砂防ダムの損傷、対策工の変状など、点検項目に応じたチェックリストをシステムに組み込むことで、誰が点検しても均質な記録品質を担保し、現場ノウハウのデジタル化と継承を支援します。
2. データの一元管理と長寿命化計画への貢献
施設情報の一元管理:
砂防ダム、対策工の位置情報に加え、設計図、過去の点検記録、修繕履歴などの膨大な施設情報をクラウド上で一元管理します。紙や分散したファイルを探す手間がなくなります。
劣化傾向の分析基盤:
蓄積された履歴データに「設置年」「材料」といった属性情報を付与し、デジタルマップ上で可視化します。これにより、施設ごとの老朽化の進捗や劣化の傾向をデータに基づいて分析でき、計画的な長寿命化や予防保全の立案に貢献します。
3. 災害発生時の初動対応と情報共有の強化
リアルタイムな被害状況の共有:
豪雨や地震などの災害発生時、現場職員や協力業者が投稿した砂防施設の被害状況、道路寸断、土砂流出の発生箇所などの緊急情報を、デジタルマップに即時反映させます。
対策本部との連携強化:
対策本部と現地調査チームは、共通の最新情報を参照しながら、初動調査ルートの決定、復旧に必要な重機の投入場所の特定など、迅速かつ正確な意思決定を行うことが可能となります。
「REPORT&SHARE」は、砂防事業における広域な維持管理を効率化し、災害時の迅速な意思決定を支える強固なデータ基盤を提供します。
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